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昼時の図書室は以外にも生徒が沢山いる。
座って好きな本を読んでいたり、真剣な顔で参考書を吟味していたり。

私は彼らの横を通りすぎてホラー小説のコーナーで立ち止った。
本は大好きで子供の頃から色々と読んできている。

恋愛小説にファンタジー小説にミステリー小説。
それぞれに面白い要素があるけれど、今一番のお気に入りはホラー小説だった。

他の作品にはない緊張感。
刺激的なシーン。

それらを読んでいるとあっという間に時間が経ってしまい、まるで自分がタイムスリップしてきた気分になる。
本棚から3冊本を抜き出してカウンターへ向かい、貸し出しの準備をしてもらう。


「返却は一週間後です」


図書委員の先輩から本を受け取って教室へ戻ってくる頃には、気持ちはすっかり落ち着いていた。


「あれ? 美保にしては珍しい本を借りてるね?」


舞子に言われて首をかしげる。


「なに言ってるの? いつも通りホラー小説だけど?」


そう答えて自分の手の中にある本へ視線を落とす。
そこに持っていたのはすべて恋愛小説だったのだ。