翌日になっても司の手の感覚を忘れられないでいた。
ポンッと頭に乗せられた手のひら。

その体温。
指先のしっかりとした感触。

思い出すだけで顔が熱くなるのがわかった。
昨日は司のせいで逃げ帰ってきたから、せっかく叔母さんが作ってくれていたフルーツタルトも食べそこねてしまった。


「おやおや? 今日は熱でもある?」


舞子が私の額に手を当てて聞いてくる。


「少し体温高いんじゃない?」

「平気だから、ほっといて」


プイッとそっぽを向くと舞子が先回りして覗き込んでくる。
なんでもかんでも見通してしまう舞子の顔があやしげに歪む。


「熱もないのに顔が赤いってことはまさか……」

「私、図書室に行く用事があるんだった!」


最後まで言わせる前にわざとらしく大きな声で宣言し、立ち上がる。
昼休憩時間はあと30分はあるから、十分に行って帰ることができる。

私は舞子から逃げるように教室を出たのだった。