☆☆☆

その屋敷の存在感は相変わらず威圧的だったけれど、この前見たときのように恐怖心は感じなかった。
もう、あの屋敷の中にいる人たちのことを私は知っている。

チャイムを押して玄関が開くのを待つ。


「突然押しかけてごめんなさい」


失礼だったかもしれないと思って近くのコンビニで買ってきたフルーツを叔母さんに手渡す。


「あらあら、おみやげなんていいのに! でも、そうね、これでフルーツタルトでも作りましょうか」


相変わらず黒尽くめの格好をした叔母さんが少女のような足取りでキッチンへと消えていく。
私は前回とは違い、1人で2階の司の部屋へ向かう。

2回ノックすると中から「どうぞ」と声が聞こえてきた。
重厚なドアをゆっくりと開いて中を覗くと、前回と同じように司はベッドの上に座っていた。

ただ、今回は天蓋のカーテンがめくられていて、椅子もすでに準備されていた。


「急に来て、ごめんね」


近づいて椅子に座る。


「いや、僕はいつでも暇だから大丈夫だよ」


見るとベッドの脇に本が積んである。
暇なときは読書をしているんだろう。
本棚にも色々な種類の本がつめこまれているし。