ゴクリと唾を飲み込んで剛の顔を見ると、そこには無表情な顔が張り付いていた。
これから言われることを察して表情を崩さないようにしているのかと思うと、胸の辺りがジクジクと痛む。

いっそ、怒ったり悲しんだりしてくれればと思う。
でもきっと剛はそういうタイプじゃない。

私はスッと息を吸い込んで剛を見た。


「ごめんなさい！」


そして勢いをつけて頭を下げる。
告白を断る行為がこれほど神経を使うものだとは思ってもいなかった。
私の中にあったのは甘い高校生生活の幻想ばかりだったと思い知った。

「……そっか」


短い声。
顔を上げるとやっぱり無表情な剛がいた。


「わかった。サンキュ」


それだけ言うと、剛は道着を握りしめて教室を出ていったのだった。