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「ちょっと、話できるか?」


教室から出ようとしたときに呼び止めてきたのは剛だった。
その声にドキッとして振り返る。

剛の真剣な表情を見て、あぁ、とうとうこの日が来てしまったと諦めた。
今日も風の声部へ向かうために急ごうと思ったのだけれど、呼び止められてしまえばそれも叶わない。

私と剛は誰もいなあくなった1年A組の教室へと逆戻りしていた。
窓の外からは運動部たちの掛け声が聞こえてくる。


「そろそろ返事、いいか?」


剛に告白されてもう一週間はたつ。
私も、そろそろちゃんとしないといけないと思っていたところだった。

いつまでも中途半端にしていれば、剛を傷つけてしまうことになる。
だけどいざこうして剛と対峙してみると、うつむいて真っ直ぐに顔を見ることができなかった。

きっと、良い返事ではないことを剛も悟っているだろう。
気まずい空気がふたりにのしかかってくる。


「あの……あの、ね」


勇気を振り絞って声を出す。
緊張して喉がカラカラに乾いてくる。