「そうだよ」


少年の声が明るく跳ねる。
その声色にホッとして私は天蓋のカーテンを開いた。

そこにいたのは色白で線の細い少年だった。
病気持ちだということが一瞬でわかるような、青白い顔をしている。

けれどその造形は美しく整っていて、見とれてしまいそうなほどだ。


「君が美保ちゃんか。思っていた通りかわいいね」

「な、なに言ってるの」


突然の褒め言葉に動揺して噛んでしまう。
こんな風に当たり前のように女性を褒める人は、日本には少ない。

私は自分の顔が赤くなるのを感じてうつむいた。


「僕はどうかな? 想像と違った?」


その質問に私は左右に首を振る。
想像通りというわけでもない。

司がここまで綺麗な男の子だなんて想像はしていなかったから。


「それならよかった」


司は心底安心したように微笑む。
その笑みに釣られるようにして司の頬に赤みが差した。

人形のような白い肌に人のぬくもりが広がっていく瞬間を見ているようだった。


「そこに椅子を使って」


司に言われて私は部屋の隅に置かれていた椅子を持ってきた。
焦げ茶色で沢山の装飾がされている椅子はずっしりと重たくて、やはり高級感がある。


「司の家ってすごくお金持ちなんだね」


改めて部屋の中を見回して言う。
壁の一面がすべて本棚になっていて、ギッシリと色々な本が詰まっている。