☆☆☆

校内から吹奏楽部のチューニング音が聞こえてくる頃、私は1人で校舎を出た。
サッカー部や陸上部がウォーミングアップをしているグラウンドを横目に見て校門を抜ける。

校門の前には細い道路があり、それを挟んだ向かい側に体育館と、テニスコート、それに柔道場があった。
体育館の二階スペスは広くとられていて、そこには重量挙げなどの器具が並んでいる。

運動部所属の生徒なら、誰でも使うことができるらしい。
特に運動部に力を入れているこの高校では、生徒たちがのびのびと運動できるように配慮されていた。

そのため、剛や孝明のような見るからに運動ができるタイプの生徒たちが多く入学してきていた。
まぁ、帰宅部の私にはそのどれもが無縁の話だ。

時々なんちゃらの会とか体育の授業で体育館へ行くことがあっても、それ以外で足を運ぶことは滅多にない。
柔道場など、きっと通学している3年間の間で1度も訪れることはないだろう。

あちこちから聞こえてくる掛け声を後ろに感じながら灼熱の中を家まで歩く。
それだけで頭がクラクラしてきそうだった。

熱されたアスファルトと照りつける太陽は、今は夏だぞ! と叫んでいるみたいだ。
そこまで叫ばなくてもカレンダーを見ればわかるから、もう少し穏やかにしていてほしいと、私は思う。