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4時間目の授業をぼんやりと聞いていても先生の声が右から左へと通り抜けていく。
気がつけば私は窓の外へ視線を向けている。

外では爽やかな風が吹いているようで、時折木々が大きく枝葉を揺らしている。
これだけ風が吹けば、きっと彼と会話ができる。

きっと、彼は今でも1人ぼっちなんだろう。
もしかしたら会話の相手を他の誰かに求めているかもしれない。

ふとそう考えると胸が落ち着かない気持ちになってきた。
彼の力は人と繋がることのできる力だ。

それはなにも、私だけに限ったことじゃないだろう。
今まさに、あの公園を歩いている誰かと会話をしているかもしれない。

もしかしたらその相手は彼と趣味が合って、すぐに意気投合するかもしれない。
実際に名前を名乗り合って、彼と約束を取り付けてしまうかもしれない。

私の想像は4時間目が終わる頃にはそこまで発展していた。
彼が1人で孤独を抱えているのは嫌だ。

だけど、私以外の誰かがその孤独を埋めているとすれば、それはもっと嫌なことだった。
4時間目の授業の後は昼休憩時間になる。

舞子がいつものようにお弁当箱を持って近づいてくるのが見えた。


「ごめん舞子。私、今日は早退するね」


早口に言ってカバンを掴み、机の中の物を入れていく。