もしかしたら彼と自分との声をつなぐにはある程度近い距離が必要なのかもしれない。
それが、家でも学校でもなくあの公園なのだ。

そう考えることで納得できる。
彼と長時間会話がしたいときには、やっぱり放課後とか、休日にあの公園に居たほうがよさそうだ。
今日みたいに通学時間では、限られた時間しか会話ができない。


「美保、今日はマシな顔してるじゃん」


教室へ入っていくと先に登校してきていた舞子が声をかけてきた。
昨日の私の顔があまりにもひどかったせいか、今日もジロジロと人の顔を眺めてくる。


「昨日はちゃんと寝たからね」


それでもクマは完全に取れてくれなくて、コンシーラーで隠しているのだけれど。


「よかったねぇ。じゃあ問題解決?」


そう聞かれて首をかしげる。
問題解決かと聞かれると、実際はなにも解決していない。

剛のことも、風にのって聞こえてくる声のことも。
それどころか、今日会話したことによって風の声の主のことがやけに気になり始めていた。

病気でずっと1人という彼は今までどんな生活をしてきたのか。
今、どんな思いで自分と会話をしているのか。

考えると胸の辺りがシクシクと痛む感じがする。
無言になってしまった私に舞子が首をかしげて「問題は山積み?」と、聞き直してきた。


「そうだね。どっちかといえばそうなのかも」