(ちょっと体が悪くて、それで学校に行けてないんだ)


その声に悲壮感はなかった。
それが当然のことであるように受け入れている声色だ。
声のトーンが変わったのは、話していいかどうか迷ったんだろう。


(そうだったんだ……)


予期せぬところで彼が高校へ言っていない理由が明らかになった。
1人だからとか、誰にも必要とされていないからとか、彼からこぼれだしていた孤独な言葉の理由がわかった気がした。


(もしかしたら、その気持が通じたのかもしれない)


やけに明るい声が返ってきた。
こっちが気にしていると思ったのだろう。


(もしそうだとしたら、君の力ってことだよね? それってすごいよね)


病気だということをはねのけるように、私も明るい声色で答える。


(そうだね。僕って実はすごい人なのかも)


それからも彼と会話を続けながらあるき続けた。
けれど、ある一定の場所を超えた辺りから彼の声はとぎれとぎれになり、学校の校門が見えるころには完全に聞こえなくなっていた。


(ねぇ、聞こえてる?)


校門を抜けながら声を欠けるけれど、返事はない。