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翌日、私はいくらかスッキリとした頭で目覚めることができた。
洗面台の鏡にうつる自分の顔はクマが薄れてどうにか見られるようになっている。

それでも少しだけ残っているクマを隠すために丁寧にコンシーラーを塗っていく。
指先で叩くようになじませたらもうクマは気にならなくなった。

朝食を取る時間もあって、両親はようやく安心したように表情を崩す。
そうして家を出て公園に差し掛かったときだった。


(僕の声が聞こえる?)


そんな声が脳裏に響いて私は息を飲んで立ち止った。


(聞こえてるよ)


思わず早口で返事をする。


(よかった。この時間くらいに声が届くんじゃないかと思って、やってみてたんだ)


ホッとしたような声を聞くと、私もなんだか安心してくる。
朝にこうしてつながったのは初めての経験でワクワクしてくる。


(昨日僕が言ったことを気にしてないか、気になってたんだ)

(うん、大丈夫だよ)


本当はとても気になっていた。
なぜ自分は必要とされていないと感じているのか、聞きたくてたまらない。

だけどそんな気持ちを押し込めた。


(よかった。昨日のあれは気にないでおいて)