風の声が言ってきたことだとは言えなくて嘘をつく。
これはついていい嘘だ。


「その友達がどういう状況にいるのかわからないけれど、本当に必要とされない人なんていないわよ」


クスクスと笑いながら答える。


「そう?」

「そうよ。必要とされていないなら、とっくに死んじゃってるわよ」


そういうものなんだろうか?
人は誰にも必要とされなくなると、縁が切れる。

ブチブチと縁が切れていくことで、存在意義までなくなっていく。
生きる意味がなくなる……。
でも今の私にはまだよくわからないことだっ
た。
そこまで人との縁が切れたこともないし、不必要だと突っぱねられたこともない。
彼は私と同じ16歳のはずだけれど、そんな経験をすでにしているということなんだろうか。


「さ、肉じゃががもう少しでできるわよ。お皿の準備をして」

「はぁい」


私はのろのろと怠慢な動きで食器棚へと移動したのだった。