私はなにを焦っていたのだろう。
そう思うと少しだけ心が軽くなる。

問題がなくなったわけじゃないけれど、明日あさってのうちに提出しなければならない課題ではなくなったからだ。


(ありがとう。雑談してよかった)

(僕は君が羨ましい)


突然の言葉に私は戸惑い、まばたきを繰り返す。
羨ましい?
今まで人からそんな風に言われたことはなかった。


(僕は誰にも必要とされたことがないから)

(それってどういうこと?)


思わず質問して、しまったと顔をしかめる。
もしかしたらそれは、学校へ行っていないことと関係があるのかもしれない。

イジメという三文字が急に脳裏に浮かんでくる。
なにが原因で学校へ通っていないのかわからないけれど、彼は自分を必要とされない人間だと思っているのだ。

そこには重たいなにかを背負っているに違いない。


(ごめん。呼ばれたから、行かないと)

(え……、うん、わかった)


またねと声をかけて、会話は途切れた。
それきり、今日は彼の声は聞こえてこなかったのだった。