(嫌いじゃないよ。どちらかといえば好きだけど、でも、そういう意味の好きじゃなくて)


言いながら自分でも何を言っているのかわからなくなってきて、考えるのを止めた。
相手はしばらく無言でいたけれど、息を吸い込むような音が聞こえてきて思わず笑ってしまう。

まるですぐ近くで一緒に悩んでくれているような感覚。
その息遣いまでしっかり聞こえてくるなんて、ちょっとおかしい。


(付き合ってもいいくらい、好き?)


その質問にはすぐには返事ができなかった。
今度は相手に私の悩ましい息遣いが聞こえているのかもしれない。


(それはまだ、なんとも言えない。でも、告白されることで、ちょっと意識はしてる)


今日もずっと剛のことを目で追いかけてしまった。
それはなんだか恥ずかしいことのように思えて、うつむく。


(いいね。誰かに必要とされて、誰かを必要としてるってことだ)

(そうなのかな?)


私は剛を必要とし始めているんだろうか?
告白されてすぐにそんな風に心が変化していくなんて、単純で恥ずかしいことには当たらないんだろうか?


(答えを焦るよりも、大切にしたほうがいいと思うよ)


途端にそれっぽい解答を出されて私は目を丸くする。


(焦ってもうまく行かないかもしれないし)

(そうだよね)


剛も待ってくれていると言っている。
それくらい時間をかけてもいいということだ。