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風に乗って聞こえてくる声については、もう両親には言わなかった。
もう1度話してしまうと本気で病院へ連れていかれてしまいそうだったからだ。
なにもなかったふりをして1日を終え、自室へ戻る。

すると部屋のテーブルに置きっぱなしにしていたスマホが光っていることに気がついた。
手にとって画面を確認してみると、剛からのメッセージだ。


《剛:初めてメッセージしてみた》


本人もなにを送ればいいかわからなかったのだろう、そんな返信に困る文章だった。
クラス内でメッセージ交換できるようにしているものの。こうして個別にメッセージを受け取るのは浸しい友人数人からだけだった。

もちろん、今まで剛からメッセージを受け取ったことはない。
その文面を見た瞬間、軽くなっていた心がまた少しだけ重たくなる。
告白の返事という、大きな課題を背負わされている気分だ。


《剛:今日は、驚かせてごめん》


私が返信に困っていると、更にそんなメッセージが送らてきた。
剛自身も急に告白したことを気にしていたみたいだ。
少しホッとする。


《美保:うん、ビックリした》


素直に返すと、剛の笑っている顔が浮かんでくるようだった。


《剛:返事はすぐじゃなくていいから》