私の言葉に男の子が(きっと、そうだろうね)と、返事をする。


(いつも、放課後の帰り道にあなたの声が聞こえてきてるよ)

(ってことは、君は学生?)

(うん。高校生だよ)


年齢まで伝えようかと思ったが、やめておいた。
声だけと言っても相手は男性だ。
むやみに個人情報を伝えるのはどうだろうかと、ストッパーがかかった。


(僕も年齢的には高校生だよ。16歳なんだ)


同い年だったことに驚きながらも、その言い方がひっかかった。


(学校には行ってないの?)

(うん。義務教育が終わってからは、ずっと家にいる)


なんで?
そう思ったけれど、寸前のところで思いとどまる。

昔は高校に入学しない人も沢山いたけれど、今ではとても少なくなっている。
それこそ義務教育と変わらないくらいの進学率があるらしい。

そこに乗っからないということは、なにか理由があるはずだ。
いい理由でも、悪い理由でも、聞いていいものかどうか判断がつかない。


(そっか。家の中は涼しい?)

(年中空調が効いてるよ! 快適快適)

(いいなぁ! 羨ましい!)