それから耳鼻科へ向かって検査してもらったけれど、結果は異常なしということで終わった。
家に返ってから何度も公園付近での出来事を思い出してみては、あれが夢だとは思えなくなって首をかしげた。


「なに変な顔してるの?」


私の隣で晩御飯の準備を進めていた母親が不審そうな視線をこちらへ向ける。
玉ねぎの皮を剥いていた私は手を止めて「誰もいないのに話し掛けられたことってある?」と、聞いてみた。


「誰もいないのに話し掛けられたこと? なぞなぞ?」

「なぞなぞじゃなくて、本当にそういうことがあったかどうかだよ」


私よりも長く生きている親なら、こういう不思議な経験もしているかもしれない。
けれど母親は怪訝そうな表情になって「あるわけないでしょ。なに変なこと言ってるの」と言い放った。


「霊感があるとか、そういうのやめなさいよ? 嫌われるから」

「そんなこと言わないし!」


慌てて否定して、母親もこんな経験はしてきていないのだとわかり、溜息をつく。