(え? どうして?)

(だって、聞こえてきてたから。風が強いなぁって)

(それ、僕が心の中で考えてたことだ。どうして君に聞こえたんだろう)


わからない。
わからないけれど、声が聞こえてくるときには強い風が吹いていることがわかる。

今も、風はまだやんでいない。
まるで、風が声を運んできているようだ。

この不思議な現象にまだ心臓がドキドキしている。
そして、すでに耳鼻科の予約時間が過ぎていることに気がついた。


(なんだかよくわからないけれど、私もう行かなきゃ。またね!)


つい、いつも友人へするように『またね』と挨拶をして、耳鼻科へと駆け出したのだった。