時間はまだ早かったけれど、もう居ても立っても居られない気持ちだった。
少しでも早く行って、早く診察してもらいたい。
そう思って一歩足を踏み出したとき。


(今の声は誰!?)


今度はハッキリと聞こえてきた。
もう聞き間違えでは済まされない。
私は歩道の脇に避けてドキドキと高鳴る心臓を服の上からギュッと押さえた。


(これはなに? どうなってるの?)

(君はだれ? どうして声が聞こえてくるの?)


相手の声も戸惑っている。
もしかしたら、今の私と同じ状況なのかもしれない。


(あなたこそ誰? どこにいるの?)


その問いかけに息を飲んだような呼吸音が聞こえてくる。
しばらく沈黙が続いたあと、恐る恐るといった様子で(君の声が頭の中に聞こえてくる)と、返ってきた。


(こっちも同じ感じ。すぐ近くで話し掛けられてる感じがする。でも、近くにはいないんだよね?)


確かめるように聞く。


(うん。僕は君のそばにはいない)


それって一体どういうことなんだろう。
近くにいないのに、声だけが聞こえてくるなんて。


(もしかして、昨日も、その前も私に話し掛けてきた?)