それから数日後。
精密検査を受けた司はどこも異常なしということで、無事に退院していた。


「今日は退院パーティーだね」


司と叔母さん、そして私の3人で病院を後にしてタクシーに乗り込む。
今日は休日で、とても晴れたいい天気の日だった。

外は蝉の鳴き声で騒がしい。


「もうスイーツの準備はできているわよ」


タクシーの助手席に乗る叔母さんが楽しげな声色で言う。
叔母さんからは甘い砂糖菓子の香りがしてきていた。


「そんなに張り切って作られても食べきらないよ」


呆れた声の司に私は「それはどうかな?」と首をかしげる。
あるいは簡単に食べ切れてしまうかもしれない。


「どういうこと?」


首をかしげる司に、私は窓の外へ視線を投げかけた。
タクシーは丘の道に差し掛かり、すでに屋敷が見えてきている。


「ほら、見て」


私が屋敷の方角を指差すと、司が目を細めて確認した。
屋敷の前には沢山のクラスメートたちが集まってきている。
そして《司くん退院おめでとう!》と、横断幕を掲げているのだ。