司の手が私の頭をゆっくりと撫でて、だんだん穏やかな気持になってくる。
叔母さんはいつの間にか病室からいなくなっていた。
気をきかせるのが上手な人だ。


「夢を見てたんだ」

「うん」

「とても、長い夢だった」

「一瞬間も眠ってたんだもん」


それは私が知らないくらい長い夢だったに違いない。
少し顔を上げてみると、司は穏やかな表情を浮かべている。
きっと、怖い夢とか、嫌な夢ではなかったんだろう。


「どんな夢だったの?」


聞いてほしそうにしていたので、そのまま訊ねることにした。


「僕は屋敷にいて、そこにひっきりなしに沢山の友達が来る夢だった。その中には剛くんの姿もあって、ふたりで沢山会話をして、笑いあった。不思議だよね、そんな過去僕らは持ってないのに」

「それ、きっと夢じゃないよ」

「え?」
そっと身を話して花瓶へ視線を向ける。
剛が持ってきてくれた花は元気を失いつつあるけれど、まだそこにあった。