司が目を覚ましたんだから!
司の声を聞いた瞬間から目の奥が熱くなって涙が滲んで浮かんできていた。

視界が滲んで司の顔が見えなくなってしまうのが嫌で、私は何度も手の甲で涙をぬぐう。


「おそいよ、もう……!」


近づき、司の手を握りしめる。
少し冷たいそれは優しく私の手を握り返してくれる。

ここ一週間は手を握っても、話し掛けてもなんの反応も示さなかったのに、今日はちゃんと反応がある。
話しかければ答えがあるし、握りしめれば握り返してくる。

今まで当たり前だと思っていたことがこんなにも嬉しく、幸せで、尊い事だったなんて!


「ごめん。本当にごめん」


司の胸に顔を寄せてその鼓動を感じる。
トクトクトクと、たしかに司は生きている音が聞こえてくる。

胸板は暖かくて、血が通っているのがわかる。
私はそのひとつひとつと大切に感じ取っていた。