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今日の放課後も舞子は慌ただしく教室を出ていく。
家庭科部の今日の活動は裁縫だそうで、ミシンの準備をするのも1年生の仕事だそうだ。

1度舞子にその部活は本当に大丈夫なのか聞いたことがあるけれど、照れ笑いを浮かべて先生がカッコイイんだと言っていた。
家庭科部の顧問と言えば当然女性だと思っていた私は、初めて顧問が男性であることを知った。

しかもその先生はまだ大学生で、臨時で顧問をしているらしく、会えるのは今だけなんだとか。
だから顧問の先生がいなくなったら部活をやめると、アッサリした顔で言っていた。

そういう理由で参加しているのなら、もうこちらがとやかく言う必要はなかった。
部活のある日に毎回走って準備に向かうその姿がウキウキしているのも頷ける。

昨日と同じように舞子の後ろ姿をみおくった私はスマホを取り出して学校の近くにある耳鼻科を調べていた。
幸い、今日は予約が空いているみたいだ。

このまま妙な幻聴が続くのも嫌なので、早急に対処することに決めて、ネット予約を入れる。
今から30分後には診察を受けることができるから、のんびりと歩いていけば丁度いい。

涼しかった教室から離れるのは嫌だったけれど、放課後になってすでにエアコンも切られているので名残おしさはない。
ここから先の教室内は蒸し風呂へ向かっていくばかりだから。