剛が司のお見舞いに来たのはその1度きりだった。
剛にとっては精一杯の謝罪だったんだろう。

クラスメートたちはそれからも入れ代わり立ち代わり病院へやってきて、叔母さんのスイーツを食べ、司を中心に談笑を続けた。
そんな、ある日のことだった。


『美保ちゃん! 司が!』


自宅に叔母さんから電話があって、私は取るものもとりあえずの体で駆け出した。
玄関から飛び出していくときに後方で母親が「こんな時間にどこに行くの!?」と、声をかけてきたけれど返事はしなかった。

時刻は夜の8時を過ぎていたけれどそんなの関係なかった。
途中でタイミングよくやってきたバスに飛び乗り、病院前で下車する。

広い駐車場を駆け抜けて夜間外来から院内へ入り、エレベーターを待つのももどかしくて階段を駆け上がる。
その先に、司の眠る病室があった。
ドアの前に立ってようやく深呼吸をする。

ここまで一気にやってきたから、呼吸すら忘れてしまっていた。
前髪を手ぐしで整える暇もなくノックする。

叔母さんの声が聞こえてくると同時に私はドアを大きく開いていた。