1度叔母さんの作るスイーツを食べたクラスメートたちはまた食べたいと思って司に会いに来るのだ。
私はそういう目的でお見舞いにくるのはどうかと思ったのだけれど、当の叔母さんが張り切ってしまって毎回新しいスイーツを用意してくるので、口を挟むことはしなかった。

なによりも、みんなちゃんと司に自己紹介するところから始まって、学校なでの楽しい出来事を話して聞かせてくれる。
そのときに司はやっぱり笑っているように見えるのだ。


「きっと、みんなのおかげで楽しい夢を見ているのよ」


叔母さんも嬉しそうにそう言った。
みんなが帰って騒々しい病室内がようやく静かになったとき、私はベッドの脇に椅子を移動してそこに腰掛けることにした。

ここが一番、司の顔がよく見える位置だ。
司はまるではしゃぎ疲れた後のようによく眠っている。


「明日もまた騒々しいかもしれない。ごめんね」


司のまつげが微かにゆれて『いいよ』と言ってくれているような気がする。


「騒々しいのもいいけれど、こうしてふたりきりでいるのもいいでしょう?」


司からの返事はない。
試しに心の中で話し掛けてみるけれど、はやり声は聞こえてこなかった。

病室には風もないし、不思議な繋がりもないんだろう。
しばらく司の寝顔を見つめていると病室をノックする音が聞こえてきた。


「はい」


返事をしても誰も中に入ってこない。
部屋を間違えたんだろうか?

そう思ったときだった。
スッと引き戸が開いて剛が姿を見せたのだ。