声の持ち主は今出剛。
剛はガッシリと筋肉質な体格をしていて、身長も180を超えていることから、自然とクラスのリーダー的存在になっていた。

運動はよくできるけれど、勉強に関しては少し苦手。
そんなタイプだった。


「魔女って、丘の上の?」


剛の言葉に反応を返したのは上川孝明。
孝明もスポーツマンタイプで、ふたりとも同じ柔道う所属。
高校に入学してから気があっていつも一緒に行動をしている。


「おう。 真っ黒な服着て、サングラスに帽子をかぶって、もう全然顔なんて見えないんだ」


剛が興奮気味に言っているのは、この街では有名な『魔女』の話だ。
もちろん、生まれたころからずっとことの街で暮らしている私も、魔女の噂は知っている。

丘の上に立つ豪邸には、1人の魔女が暮らしている。
魔女は夏でも冬でも黒い長袖を着ていて、黒いサングラスに黒いツバ広な帽子を深くかぶっている。

だから誰もその顔を見たことがない。
お店の中にはいっても、帽子やサングラスを取ることがないからだ。
魔女は時々街のスーパーなどに出没するけれど、外に出ているところはほとんど目撃されていない。