「強い人間にぶら下がって人の不幸を楽しんでたやつらに、剛を笑う権利なんてない!」


剛を許すことはできない。
絶対に。
罰せられるべきだと思う。

だけどクラスで吊し上げて笑いものにするのは違う。
私は、そんなことがしたいわけじゃない。
私は振りかえってクラスメートひとりひとりを見つめていく。

ほとんどの生徒が私から視線をそらせていく。
だけど舞子も含めて何人かは、ちゃんと目を合わせてくれた。

ちゃんと、私の言葉が届いている証拠だ。


「私の好きな人は昨日手首を切って意識不明になって、まだ入院してる。でもそれは剛のせいだけじゃない。少しずつ、色々な歯車が狂った結果だったの」


舞子が両手で顔を覆って泣き始めた。
この事実はすでに知っていたはずだけれど、こうして私の口から聞くことで一気に現実味がましたのだろう。


「彼が目覚めないのは傷のせいじゃない。精神的なものが原因で、自分から眠りについているんだって。それくらい目をそらしたい現実があるんだって!」


みんなにも知ってほしい。
自分が流した噂のひとつが、もしかしたら相手の人生を狂わせてしまうかもしれないこと。

言葉は人を狂わせてしまうことができること。