自分が強くならないといけないんだ。
そう、心の決めたらしい。
司とふたりきりの生活になっても、叔母さんは自分を母親だとは名乗らなかった。

司を心の底から愛してくれていた夫婦のためにも、そのほうがいいと判断したのだ。


「司は沢山の人に守られてここまで来たのよ。最近では美保ちゃん、あなたに守られてる」

「私なんてなにも……」

「一緒にいてくれるだけで、あの子にとっては幸せなことなの。今回は少し歯車が狂ってしまったようだけどね」


最後まで話し終えてホッと息を吐き出し、ようやく缶コーヒーの蓋を開けた。


「司がこのまま目を覚まさなかったらどうしよう……」


「そうならないように、美保ちゃんが毎日ここへ来て、司に声をかけてちょうだい。


もしも美保ちゃんの中に少しの罪悪感があるなら、私はそうしてもらうことを願うわ」


なんて優しい贖罪のしかただろうか。
こんなことになってもまだ、私は司と一緒にいることを許されたのだ。
心の奥が熱くなり、また涙が溢れてくる。


「ありがとう……ございます」


震える声で、ようやっとそう伝えたのだった。