少しずつ少しずつ狂っていって歯車のせいで、今回の悲劇が起こった。
誰が悪いとか、誰の責任だとか、そういうことじゃないと、叔母さんは言っている。


「それにね、さっきも言ったけれど、司は死なないから大丈夫よ」


それには強い確信を抱いているようだった。
今までも何度か繰り返された自殺未遂をすべて乗り越えてきているからだろうか。


「ここだけの話をしてあげる」


叔母さんは青白い顔でいたずらっ子みたいな笑みを見せた。


「私は本当は、司の叔母さんじゃないのよ」


え……。
私は鼻をすすって叔母さんを見つめる。
横顔は司ととてもよく似ていた。


「本当はね、司の実の母親なのよ」

「母親……?」

「あら、あまり驚かないのね?」


クスクスと笑う叔母さんに私は左右に首を振った。
驚いていないわけじゃない。
驚きすぎて言葉が出てこないだけだ。


「私も生まれつき病弱でね、しかもこんな格好じゃないと外にも出られないでしょう?」


叔母さんは今日も黒い服とサングラスと帽子に身を包んでいる。
今ではすっかり見慣れた姿だ。