司はそんな私の目をジッと見据えている。
確かに私を見ているはずなのに、どこか遠くを見ているような目。


「司?」

「一緒に死のうか」


私が司の名前を呼ぶのとほぼ同時だった。


「え?」


驚いて、一拍遅れて目を見開く。
司はさっきまでと変わらない表情で私を見つめている。
ねぇ、その目はなにを見ているの?

どこか遠くの未来?
それとも、ずっと昔の過去?


「一緒に死のう。そうすればきっと、ふたりで幸せになることができる」

「なに、言ってるの?」


冗談でしょう? と、受け流そうとしたけれど難しかった。
声が震えて、笑顔も引きつってしまう。

その間に司はテーブルへ近づいていき、そこから一本のカッターナイフを抜き取って戻ってきた。
カチカチと刃を伸ばし、うっとりとしたような表情でそれを見つめる。
カッターの刃は蛍光灯に照らされて先端がギラギラと輝いて見えた。