次の瞬間、2階の窓が開いて叔母さんが顔を出した。


「くそ! 逃げるぞ!」


孝明が剛の手を掴んで走り出す。
ガソリンの匂いが立ち込める中、私はライターをできるだけ遠くへと投げた。

それは丘の上から転がって落ちていく。


「美保ちゃん、どうしたの!?」


裏口から慌てて飛び出してきた叔母さんが、ガソリンの匂いに気がついてすぐに顔をしかめた。


「ごめんなさい……」


私はその場に膝をついて謝罪する。
やっぱり私には無理だった。

自分の力だけでどうにかしようなんて、浅はかだったんだ。
次から次へと涙がこぼれ出てくるのを止められない。
叔母さんはそっと私の背中に腕を回して、優しく頭を撫でてくれていたのだった。