きっと剛も自分の言っていることが無茶苦茶であることはわかっているはずだ。
もう、後戻りができなくなっているだけなんだ。


「落ち着いてよ剛。魔女なんていない。魔女狩りなんてする必要はない」

「黙れ!」


剛の怒号が鼓膜揺るがす。
すぐ近くで怒鳴られたせいで、耳が一瞬遠くなる。


「ここで話していても押し問答になるだけだ。行くぞ」


剛の言葉に孝明がタンクを持って歩き出す。


「嫌! やめて!」


必死に叫ぶ私を振り向き、孝明が笑う。


「お前の彼氏があいつじゃなければ、剛もここまで絡むことはなかったのにな」

「どういうこと……? どうして司にそこまで執着するの!?」

「剛と司は少しの間だけ同じ小学校に通ってたんだ。まぁ、司の方は病気がちであまり学校には来ていなかったどな。それなのに、あの見た目だ。女子たちにはひどく人気があってなぁ。当時剛が片思いしてた女子も、司のことを好きになったんだ。今回は2度目なんだよ。剛が好きな女を司に奪われたのはよ」


嘘でしょ……。
剛と司が顔見知りだったなんて!


「余計なことをベラベラしゃべるな」


剛は孝明へ向けてそう一括したのだった。