さすがにそろそろ怪しまれている頃だと思っていた。


「大丈夫です。午前中授業も、今日で終わりなので」


言いながら胸がチクチク痛む。
明日からはもう学校を早退して屋敷へ逃げ込むことができなくなってしまう。


「そう。それならいいの。でもね、もしなにかあるならまたうちに来てもいいのよ?」


叔母さんの言葉に私はまた手を止めてしまった。
クリームはほとんど出来上がっている。


「……ここに来てもいいんですか?」


そんなことを聞けば学校に居られなくなった理由があると言っているようなものなのに、つい質問してしまった。
叔母さんは目尻にシワを寄せて微笑む。


「もちろんよ。美保ちゃんは司の唯一の友達なんだから、いつでも大歓迎なのよ」

「ありがとうございます」


嬉しくて胸の奥が熱を帯びる。
こんな風に私のことを大切に思ってくれる人は、今はきっとずっと少ないはずだ。


「司は美保ちゃんと出会ってから笑顔が増えたの。美保ちゃんが作ってくれた料理はおかわりもするし、そのおかげで最近は熱を出すことも減ったのよ」

「司はよく熱を出してたんですか?」