(うん。私も会いたい。今から行ってもいい?)

(もちろんだよ! 待ってるよ、美保)

(わかった。今から行くね)


これほど誰かを恋しいと思ったことはなかった。
早く。

一分でも一秒でも早く司に会いに行きたい。
返事をしなかったことをちゃんと謝りたい。

風の中を走って走って、ようやくあの丘が見えてきた。
丘の上にそびえ立つ屋敷は相変わらず豪華で、人を寄せ付けない雰囲気を持っている。

私は屋敷の前に立ち、手鏡を取り出した。
前髪の乱れを直して、笑顔を作ってみる。

大丈夫。
これなら司を心配させることはなさそうだ。

最近はあまり笑っていないから、表情が引きつってしまうかと思ったけれど、どうにか自然な笑みを作ることができた。
それから玄関チャイムを鳴らす。