剛に啖呵を切った私はそのままの勢いで学校を飛び出していた。
行く宛はない。

だけどジッと教室にこもってイジメられるのを待つだけなんて、嫌だった。
大股で歩いて校門を抜ける。

途中で制服を脱ぎ捨ててしまいたくなったけれど、さすがにそれはグッと我慢をした。
このままどこまでも遠くへ行ってしまいたい。

誰も私のことを知らない世界まで、旅してしまいたい。
そう思うのに、足は自然と家のある方角へ向かう。

私の世界はまだ狭く、帰る場所はいつもひとつしかなかったからだ。


(美保、いたら返事をして)


強い風とともに聞こえてきた声にハッと息を飲んで立ち止まる。
どうしてこんな時間に?

今は司に伝えている帰宅時間とは大きくズレている。
それなのに、風に乗って司の声が聞こえてくる。

私は立ち止まり、その声に耳を傾けた。


(美保、美保、いる?)


いつからこうして呼びかけているんだろう。
まさか、登校時間からずっとだろうか?


(美保、いたら返事をして)