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どうにか始業時間には間に合ったものの、髪型はグチャグチャになっていた。
強い風のせいで頭に葉っぱが乗っかったことに気がついていなかったのだ。
頭の中でシミュレーションしていた通り、教室に入る前に女子トイレに立ち寄り、頭についた葉っぱを落とす。
幸いファンデーションは崩れていなかったので、汗を拭くだけにして、髪の毛はくくり直してA組へと向かった。
「おはよー美保。昨日の映画は最後まで見たの?」
教室へ入ると待っていましたとばかりに舞子が近づいてくる。
「もちろん! ずっごく面白かったよ!」
その言葉に舞子がわざとらしくしかめっ面をしてみせた。
「面白かったの? あれが?」
「怖いも面白いも同じでしょ」
「そうだけどさぁ」
どうやら舞子は本当に苦手だったみたいだ。
それなのに途中まで付き合ってくれたことには感謝しないといけない。
「それよりさ、なんか耳の調子が変なんだよね」
昨日のホラー映画の感想を言い合った後、私は自分の両耳に触れて言った。
「どうしたの?」
「なんか、変な声が聞こえてくるの」