そこにあるのは来客用のスリッパだ。


「あははっ。上履き、はけなくて、それで、スリッパなの」


おかしいでしょう?
と、笑ってほしくて言う。

けれど舞子は笑わなかった。
肩を震わせて、舞子の頬からポツポツと廊下に水滴が落ちていく。

舞子、泣いてるの?
声をかける前に舞子はかけだしていた。


「待って!」


咄嗟に追いかけようとするけれど、スリッパでは早く走れない。
その間に舞子は女子トイレへと逃げ込んでしまったのだった。