他のクラスメートたちも同じように笑うか、素知らぬ顔をしてやり過ごす。
舞子はこういうとき必ず教室を出て行って、私の近くにはいなかった。


「魔女って、足も臭いだね?」


由奈が耳元で意地悪くささやく。
私はもうそれに反応することもなく、黙々と倒された机をもとに戻す。

心を閉ざす。
現実から逃げる。

そしてただひとつの拠り所だった、風の声部までが奪われる。


「美保さぁ、なんで毎日公園の前で立ち止ってんの?」


ある日の朝由奈からそう聞かれて心臓が止まってしまうかと思った。
咄嗟に視線をそらして無視しようとするけれど、由奈がそれを許すはずもない。


「ねぇ、聞いてんだけど?」


私の行く手を遮るように取り巻き立ちと共に進路を塞ぐ。
返事をするまでそうしているつもりなんだろう。

私は仕方なく顔を上げる。

そして「なんのこと?」と、首をかしげた。
途端に由奈が近くにあった机を蹴り上げた。

ガンッ! と大きな音がしてクラスメートたちの視線が集まる。
私は条件反射敵にビクリと体を跳ねさせて由奈を見た。