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なにも変わったことはないはずだった。
これから先もずっと、日常を続けていくものだと思っていた。

翌日の教室内で私は自分の机の前で立ち尽くしていた。
机の天板にはマジックで《魔女》とひとこと書かれている。

あきらかに誰かが悪意を込めて書いたもので、見つけた瞬間呼吸が止まった。
心臓が早鐘を打ち始めて、嫌な汗が背中を流れていくのを感じる。

私はその場に立ち尽くしたまましばらく動くことができなかった。
早くこの悪質なラクガキを消さなきゃいけない。

じゃないと、他の誰かに見られてしまう。
頭ではそう考えることができるのに、行動が伴わない。

呆然と立ち尽くしている間に舞子が教室に入ってきて、咄嗟に机にカバンを置いてラクガキをかくした。


「おはよう舞子。今日は、私の方が先に登校してきてたね」


大丈夫。
いつもどおりの会話に、いつもどおりの笑顔が作れているはずだ。
鼓動の速さまでは舞子に伝わることはない。

しかし、舞子から返事はなかった。
私の横に立ち、ジッと顔を見つめてくる。