声だけのやりとりなのに、ちょっとした変化でも見逃してもらえない。


(本当だよ。今日は友だちの舞子がね……)


それから私は学校での他愛のない出来事を話して聞かせた。
なんでもない日常の一コマを、司は本当に楽しそうに聞いてくれるのだ。


(いいな学校。楽しそうで)

(そうだね。楽しいよ)


少しの沈黙。
司は今なにを考えているんだろう。
ベッドの上で、1人きりで。


(明日もまた、楽しい話を聞かせてよ)

(もちろん。それじゃ、また明日)


太陽はすでに沈み始めていて周囲はオレンジ色に包み込まれている。
私は司へ(またね)と声をかけて、歩き出したのだった。