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このまま舞子に司のことを黙っているわけにはいかなさそうだ。
司との出会いをどうにか考えて説明したほうがいいかもしれない。

でも、適当なことは言えないし、今日司に相談してみようかな。
登校初日にそんなふうに考え事をしていたら、午前中だけの学校はすぐに終わってしまった。

みんな帰り支度を始める中、私は剛に声をかけられていた。
剛と話をするのは花火大会の日以来だ。


「なに?」


剛からの告白はすでに断っているから、話は特にないはずだ。
そう思いながらも心臓はドクドクと早くなってくる。
剛の真剣な顔を目の当たりにしたらなんだか自分に後ろ暗い部分があるような気がしてきてしまう。


「花火大会の日、あの屋敷に行ってただろ」


思いもよらぬ言葉に私は目を見開いて固まってしまった。
まさか、私の後をついてきていたんだろうか。
友人らと合流することのない私を不審に感じていたのかもしれない。


「なに行ってるの? 行ってないよ」


声が震えた。
嘘をつく必要はないと思う反面、剛は叔母さんのことを『魔女』と呼んで忌み嫌っていたことを思い出す。
やっぱり、剛には言えない。


「嘘つくなよ。なんで嘘つくんだよ」

「嘘なんてついてないよ。誰かと見間違えたんじゃない?」


私は突っぱねるようにそう言うと、逃げるように教室を出たのだった。