剛が指差す方向にはステージがあり、今は地元で活動しているバンドが演奏しているところだった。
その人混みの中に舞子がいるとわかり、私は踵を返してあるきだしていた。


「ごめん、私用事があるの」


早口にそう言って剛から遠ざかる。
悪いことをしているわけじゃないのに、剛から呼び止められても私は足を動かすことを止めなかったのだった。