匂い立ちしている母親へ定番の文句をぶつけて呆れ顔をされながらすばやく制服を身に着ける。


「昨日あんな映画を観るから寝付けなくなったんでしょう」


図星をつかれてなにも言い返せないまま部屋を出て洗面所で顔を洗う。
どれだけ忙しくても、洗顔とヘアセットだけは無碍にはできない。

髪の毛を全体的にブラッシングして、今日は簡単に耳の下あたりでふたつにくくった。
さすがにヘアスタイルに凝っている場合ではなかった。

最悪、学校に到着してからゆっくりとヘアアレンジすることもできる。
そうこうしているうちにすでに15分が経過していた。

「じゃ、行ってきます!」


鞄を掴んで大慌てで玄関へ向かう私に、母親がお弁当持たせてくれた。
キッチンから香ってくる朝食の匂いに足を止めてしまいそうになるが、どうにか玄関を出て走り出したのだった。