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翌日、母親にお土産を持たされて私は屋敷へと赴いていた。
叔母さんは菓子折りを丁寧に受け取って「今日は叔母さんの名刺も持って帰ってね」と、仕事用の名刺を差し出してきた。

クッキーやケーキのイラストが描かれた名刺には、叔母さんの名前と通販サイトのURLが記載されている。
私はそれを丁寧に受け取ってから、司の部屋へ向かった。


「もうすぐ花火大会だね」


宿題を進めてから司に言われて私はグッと喉の奥に言葉をつまらせた。


「そ、そうだね」


ぎこちなく微笑む。
自分から花火大会の話題は出さないようにしようと思っていたけれど、同じ街に暮らしているのだから話題になっても不思議じゃなかった。


「ここは丘の上だから花火がよく見えるよ」

「え、そうなんだ?」

「うん。ここの窓からちょうど見える」


司はそういうとベッドか降りて窓のカーテンを開いた。
横に立って街を眺めてみると、たしかに花火会場になる河川敷が前方に見えている。

背の高い建物もないから、綺麗に見えるだろう。


「すごい、ここって穴場だったんだ」

「そうだよ。毎年、僕と叔母さんだけで見てる特等席なんだ」