慌てて否定する。
司や叔母さんはとてもいい人で、優しくしてくれている。
悪い相手なんてとんでもなかった。


「じゃあ、教えられるでしょう?」


私はさっきから黙っている父親を横目で見る。
父親も私の交友関係に興味があるようで、母親を止める気はなさそうだ。


「新しい友だちかい?」


優しく尋ねられて、観念した。
私は端を置いて母親へ視線を戻す。


「丘の上の屋敷に行ってるの」


その言葉に母親の目が大きく見開かれた。


「へぇ、あそこには確か天野さんの家だね」


父親が穏やかに呟く。
私は頷く。
さすがに、両親ともなると名字くらいは知っていたみたいだ。


「あの家に子供がいるの?」


母親の声は少し険しい。
そしてその問いかけはなぜか私ではなくて、父親へ向けられていた。


「あぁ。確か美保と同い年くらいの子がいたはずだよ。病気がちで、あまり家から出られないと聞いたことがある」


一体どこからそんな情報を仕入れてくるんだろうと、メマイを感じた。


「あらそうなの。勉強はそこでしてるの?」