「喜んでもらえてよかった」


今回のことは私が叔母さんに直接連絡を取ることで実現したサプライズだった。
屋敷に直接電話を入れるときはさすがに緊張したけれど、やってよかったと思える結果になった。


「それと、これも」


私はカバンの中から一冊の文庫本を取り出した。
お店でラッピングしてもらおうかとも考えたけれど、大げさにするのはやめておいた。


「ホラー小説？」


受け取りながら司が私を見つめる。
その澄んだ瞳には吸い込まれそうになってしまう。


「うん。私の１番のお気に入り。この作品を読んでから小説ハマったの」

「へぇ、そうなんだ」


今度は興味深そうに本へ視線を落とす。
今まで司にホラーはオススメしてこなかった。

引かれるかなとか、部屋で１人でいるときには読みたくないかなとか、色々考えてしまったからだ。
だけどこれをきっかけに、もっと私を知ってもらいたいと思ったのだ。


「これは司にプレゼントするね」

「いいの？」

「うん。勉強のお礼だから」

「食事まで作ってくれて、そんなに気にしなくていいのに」