昼休憩時間の1年A組教室内はおだやかな雰囲気に包まれている。
空腹も満たされてこのまま眠ってしまいそうになる時間帯、窓が開けられたクラス内には心地よい風が吹き込んできていた。


「今日も熱いね。8月になったらどうなるんだろ」


ブラウスの第一ボタンを外して、汗ばむ首元を下敷きで仰いでいるのは友人の石原舞子だ。
舞子は長い髪を頭のてっぺんでお団子ににしていかにも涼しそうな格好だけれど、それでも首元から汗が滲んでいるのが見える。


「今年は酷暑らしいからね。夏休みに入っても暑さできっとどこにも行けないよ」


私も舞子と同じように自分の透明な下敷きで首元に風を送り込みながら返す。
7月上旬。
つい3日前に梅雨明け宣言がされたばかりなのに、気温は急上昇している。

家から学校までのほんの15分ほどの道のりを歩くだけで、私は汗だくだ。
自転車通学でもっと距離もあるし、人力で子がなければ駆らない舞子はいつも仏頂面をして「私の方がしんどい」と文句を言っている。

とにかく、今年の夏は私たちにとって体力を奪われるほどの暑さとの戦いになりそうだった。


「なぁ、この前魔女を見たんだ!」

おだやかな昼休憩の教室内に、そんな声が響いた。
舞子と私はなにげなくそちらへ視線を向ける。