「おはようございます! おにいちゃん!」
「おはよう、李湖ちゃん」
そういえば誰とも朝の挨拶をしていなかった。
そんな場合じゃなかったからだけど、やっぱり李湖ちゃんは場をほのぼのとさせてくれる。
車中の空気に漂っていた緊張が、一瞬ゆるんだ。
「優大くん、学校の方は大丈夫? 霞湖はもう休みの連絡してあるんだけど、なんか無理やり連れてきちゃったけど……優大くんがいてくれると、私たちなんだか安心しちゃうから……」
「あ、大丈夫です。家の人から、用事出来たから休むって連絡してもらいます」
つまりは結菜さんの頼り時だということだ。
水束家と三宮家のことに首を突っ込んでいるバレてしまってから、結菜さんは顔を合わせる度に進捗を聞いてくる。
野次馬とか好奇心からではなく、素直に霞湖ちゃんたちを心配しているんだ。
そして結菜さんの立場なら簡単にその手の情報は得られるけど、俺がどうしているか、を聞きたいんだと思う。
結菜さんへ現在の概要と学校への連絡をお願いしたいとメッセージを送ると、即座に既読がついた。
そして
【かしこまりました。
学校に連絡しておきます。
優大様が最良だと思うことをされてください。】
と、返信があった。
……うん、最良だと思うこと、を。
+++
病院は受付の始まっている時間だったけど、楓湖さんは救急外来の窓口に向かった。
病院側からそちらへ来るよう言われていたようだ。
みんなが早く移動できるように、俺が李湖ちゃんを抱きかかえている。
李湖ちゃんは何が起こっているのかわかっているのかいないのか、高い景色を楽しんでいた。
楓湖さんが話しかけた窓口の人は院内の電話機を取って何かを喋ってから、俺たちにすぐに病室へあがるように指示した。
職員が使う業務用のエレベーターを使っていいと、受付に座っていた人のひとりがそこまで案内してくれる。