「はい……実は今もあります……桐湖ちゃんや、お父さんや、お母さんが頑張ってるのに、私だけ学校を楽しんでいて、申し訳ないって思うとき……」

霞湖ちゃんは強い。そして優しい。

苦悩していることが、手に取るようにわかってしまうくらいに。

そんな、迷宮の中にいる霞湖ちゃんに言葉をかけるなら。

「いつになるかわからないけど、それを……超える日は、必ず来ると思うから」

希望を、今は見えなくても、いつかと願いをこめて、かける。

言霊を、知っているから。

「………はい」

霞湖ちゃんは、少しだけ寂しさを目元にのせて、俺を見てきた。

「あと、もうひとつ約束する。その日まで、彼女は作らないし、家からの許嫁話も断る。國陽、そこは協力してくれるよな?」

「当然だ」

うなずく國陽の反応を見て、霞湖ちゃんは大きく目を見開いた。

「あの……司さんは、なんでそんなに、応援? してくれるんですか……?」

「優大には幼い頃から、俺のはとこというだけで苦労と面倒をかけてきましたので……優大が望んだ幸せは、手にしてほしいと思っています」

だから、です。

……國陽が俺に気を遣っているのはわかっていた。でも、こういう形で返そうとしてくれるなら、俺はただ嬉しい。

気遣いからの暴走ってあるから。

「私も応援しますよ! 優大に来た縁談は持ってきた奴をぶっ飛ばす形でナシにします!」

そしてこいつは気遣いが暴走する奴だ。

げしっとテーブルの下で足を蹴って置いた。