「……國陽、やっぱお前に頼む」
「俺も流夜さんに習っているからそれなりの破壊力はあるけど……」
流夜さん仕込みはやべえ。
霞湖ちゃんを見る。
「霞湖ちゃん、俺のこと引っぱたいてくんない?」
「ああ……選択肢が……ないですよね……」
霞湖ちゃんが同情の眼差しをくれた。
うん、この二人ってこうなんだよね……理性的なくせに力こそパワーだから……。
「平手打ちなら得意ですけど……」
「ちょっと待って。なんで平手打ちが得意なの?」
思わず上体を起こして霞湖ちゃんに向かって眉根を寄せてしまった。
霞湖ちゃんは少しうなる。
「……必要に迫られて?」
可愛く首を傾げられても、どんな必要だったか想像はつかなかった。
むしろつけたくなかったので、それ以上は訊かなかった。
そう、だな……こうやって、國陽が周りから固めてきたのなら。
「……霞湖ちゃんが、」
「はい?」
「……霞湖ちゃんが、心から笑えたら、交際申し込む」
「………え?」
何度も瞬く霞湖ちゃん。
今の言葉では意味が伝わらなかっただろう。
「もしも今付き合ったら、霞湖ちゃんは自分を責めてしまうときがあると思う。桐湖さんのことがあるのに自分だけ……とか。だから、霞湖ちゃんが本当に笑うことが出来るようになったら、告白し直す」
俺の言葉に、きょときょとしていた霞湖ちゃんだけど、じんわりと意味が伝わったのか、胸のあたりでこぶしを握った。